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2005/03/24(木) side A : あの日 あるいは バーデンベルギア
小さなつぼみを付けてから、その花は房を伸ばす。

最初にこの花がお家に来てくれたのは、父が迎えた最後のお正月だった。

お正月の用意のお買い物に家族全員で行ったホームセンターで、その花は揺れていた。

初めて見るその花は、なぜか二鉢だけ置いてあり、蘭のような小さな花弁に、最初に見惚れたのは母だった。

「きれいだね」
「初めて見るね」
「珍しいねぇ、お正月らしくて、おめでたい感じだし」

「なんだか鶴のようだね」って言う、おばぁちゃんの言葉にみんなでうなずいて、うなずくみんなにみんなが気付いて、大笑いした。

店員さんに名前を聞いてみたけれど、判らなくて、少し値段は高かったのだけれど、連れて来た二鉢は、門の左右に門松と一緒に並んで、新年を迎えた。

次の年、暮らしが変わって、初めてのお正月は、まだまだ私も暮らすだけで一杯で、お飾りも一夜飾りになってしまったし、おせち料理はもちろんなくて、その花のことも忘れていた。

18才で迎えた年の暮れは、私はソープの仕事と受験で目一杯だった。色々な事があって、ネットに少しだけ私は言葉を置いてみたけれど、また行き詰って、そこからも離れた。

年内最後の仕事を終えて、駅まで歩く途中にある、繁華街の夜の店のためにある花屋さんに、その花が一鉢だけ揺れていた。

バーデンベルギア

それがその花の名前で、お家に連れて帰って、懐中電灯を点して、庭にあるはずのその花を探した。

ほとんど葉も無くなっていたけど、まだ生きていてくれて、北風の吹く真夜中の庭で、私は泣いた。

鉢も大きく新しくして、バーデンベルギアは今年も咲く。去年の暮れに二鉢買い足して、今は5鉢ある。

家族みんなが揃った最後のお正月の風景が浮かぶ。懐かしいけど、もう二度と戻らない。

今年も花は咲き、形を変えても、家族はここにいる。


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