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2004/09/24(金)
side B: それぞれの窓 あるいは 灯りたち
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カーテンを開くと、見慣れた風景が広がる。
「ステキだろ?」 「すごいねぇっ!!」
もう何度も似たような会話をした。でも、この景色を、お金で買った私のために用意してくれる気持ちはうれしい。
「ちょっと近過ぎだなぁ」
観覧車の窓の人影は、肉眼で動きまで判る。私としたかった事を、その近さにためらうお客さんがちょっとかわいいそうになる。
「私ならいいよ」 「そう?でも・・・」
窓際から見える、遠い方のホテルの窓は、ただただ灯りにしか見えなくて、カーテンを引く動きと、灯される明かりだけが、時々景色の表情を変える。
近い方のホテルの窓には、人影の動きも見えて、デジタルズームをONにして、思い切り寄せていくと、いくつかの部屋では、ハダカで絡み合う姿態さえ見える。
地方から来るそのお客さんとは、軽く食事をしてビジネスホテルで過ごす外出しか経験がなかった。
「すごいなぁ・・・・」 「すごいねぇ・・・・」
液晶の中にはほんの1kmは離れていない、それぞれの窓の、それぞれの今がある。
でもそれは映画やビデオやTVとおんなじで、触れることも、交わることも無い、それぞれの空間だ。
観覧車の、最上部に近づくゴンドラの窓から見える人影は、約束のように抱き合って、接吻を交わす。そして、次のゴンドラも、次のゴンドラも。
「ま、いいか。せっかくだし。」
服を脱いで私達も交わる。灯りは消さないままに。
観覧車は回り続けて、色だけを時々変えていた
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![](/user/reversible/img/2004_9/24.jpg) |
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