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2004/03/25(木) side B:父親の性交シーンを見るということ
雨が上がった後、ポピーの花びらはみんな落ちてしまっていた。週の初めの強い風で、折れてしまった花を、私は靴箱の上の一輪挿しに飾っていて、それだけが残っている。久しぶりに包まれる春の日差しに、新しい花芽は伸びてきていて、明日には殻をポンと落として、新しい花が咲いている。

祖母がデイケア施設へ出かけ、妹と弟はそれぞれの友達と遊びに出かけた後、先週、荷物の整理をしていて見つけた、封をされた紙袋に入っていた、古い8ミリビデオを再生してみた。「恐らく」の予感は当たっていて、そのビデオには知らない女性と交わる父の姿があった。

父の自殺は、ある程度計画的で、ある程度発作的だったと思う。ほとんど私一人で整理してきた父の荷物は、明らかに母の目に触れる事をはばかって、一部のページが裂かれて欠けている手帳や、古い箱に、新しくテープで封がされた後があったり、他の物が入っていた跡が認められる袋もあったりする。すべてを捨てずに残していたのは、自分の生きてきた人生を、跡形無しに消してしまうのに未練があったのか、整理して、すべて捨てる前に自殺してしまったのかは今のところ私には判らない。残して伝えたかったのが、誰に対してなのかも判らないし。

そのビデオに映っている父は、まだ30代だと見える。幼稚園の入園式のビデオが、私の姿が残っている最初のビデオなので、その前後のようにも見える。厳重に封がされていて、外からは何か判らないようになっていたけど、それはそれだけで、中に怪しいものが入っている事を主張しているようなものだった。きっとこの袋は、絶対捨てたかったんだけれど、見つけることが出来なかったんだと思うし、ひょっとすると、これが見つからなくって、何日か自殺を思いとどまったのかもしれない。

「どこを押すんだろう?」という声と、ピントが合っていなくて、ボーっとした白い画面からそのビデオは始まっている。ビデオカメラは私の卒園式のためではなくて、このセックスを撮影するために買われたのかも知れないなぁって思うとちょっと寂しい。女の人はどうすればそんなに重力に逆らえるのかってくらい、前髪を立てていて、今ならちょっと見られないべったりした化粧をしている。肩から、何センチも突き出した、大きなパット入りで金のモールがついたスーツを着ていて、首にへんなスカーフを、今なら戦隊ヒーロー以外は結ばない形に結んでいて、自信タップリな表情で笑っているけど、カメラはシワや骨ばってきている首の筋や、毛穴が開いた指の甲をしっかり解像していて、なんか哀れな感じもする。そしてそんな人とのセックスを撮影している父も悲しい。

その人は赤坂に勤める人で、父とは2−3年来の店での馴染みで、そういう関係になってからも半年は経っていて、でも関係は3―4回で、きょうは合意の上でビデオを撮ることになっていることが、会話から判る。窓から見える風景から、部屋が赤坂プリンスなのも分かる。

くねくねと媚態を作って、スカーフを外し、上着を脱ぎ、、ブラウスを脱いで下着になる。足を開いてショーツのまたの部分を指でつまんで、少しズラシテ性器を見せる。気を使ってメンテはしている身体だと思うけど、たぶん40は過ぎている。でも会話だと、父より年下らしい。10歳くらい嘘をついていて、それに気付かない父が可笑しい。ブラを外すと乳輪が大きめの乳首が平行より下を向いたCカップくらいの乳房が現れて、近づいてきたその乳房に、カメラの側から父手が伸びて、触る。

シャワーシーンがあり、結合しながらその部分を撮ったシーンがかなり長い時間あり、ベッドで様々に体位を変えて交じり合い、カメラのレンズを意識して、結合部をその方向にひねるので、何度か両方の、「痛い!」って言葉が入っていて、最後はカメラのことも忘れたように激しく動いて、ほぼ同時に絶頂を迎えたように見えた。

少し間があって、ベッドから起き上がった父が、カメラに向かって歩いてきて、最後のシーンは、射精を終わった独特の萎え方の、ペニスのアップだった。時間は約1時間半。

私は裏庭で、ビデオを燃やした。嫌な臭いが鼻を突いて、でもケースから出したテープはあっという間に燃え上がり、灰にもならず燃え尽きていった。笑っちゃうけど、私や妹や弟ばかりが主役で映っているビデオばっかりの中で、唯一、父が主役で、たくさん映っていたビデオはこの世から消えた。

これは無いほうがいいよね、これは。

父の性的なものを感じさせる記録は今までにもあった。でもそれは文字であったし、家族ができる前のことだった。私が持っていようかとも思ったのだけれど、もし私に何かあったとき、弟や妹にこれは絶対残せないし。

馬鹿だね、父さん。

ビデオにその頃父が何を思っていたのかに繋がるものは無い。ただただ性を貪る一人の「男」しか、居はしなかった。今の仕事をしているから、私は、少し理解は出来る。でも、他の家族は理解できないし、理解できるようになって欲しくもない。

馬鹿だね、父さん。

もう一度、今度は声に出して言ってから、私は仕事へ行く準備をしに部屋へ戻った。


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