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2004/08/28(土) side A:   街 
階段を昇ると、踊り場のところから、もう雑踏を感じる。仕事で外出をするようになってから、この街は見慣れた街になった。

ぽかっと空いた時間は、外出の途中で鳴ったお客さんの携帯から始まって、大きな声の会話が終わった後、むっとした顔をすぐに収めて、

「一本分、一人で遊んでてくれる?飯も軽く食っといて」

って、いつもの笑顔で伝える。時間では無く、「一本分」。

前なら、待ち合わせのラウンジで待っていたのだけれど、アストラルで無くなったその場所は、なんだか馴染めない店になった。

警察署の前を通ってABCへ行くのもお客さんに教えてもらったけど、今は駅の横の書店に入る。文庫の新刊を2冊買って、名刺を取り出すスカウトさんを笑顔で振り切りながら、交差点を渡って、富士蕎麦へ入る。

「きつねならうどんだな」なんて思いながら食券を買って、髪を上げてさくさく食べる。

外に出ると、風はひんやりしていて、裏道をぐるっと回って表通りへ出ると、客引きのお兄さんと当番のおねぇさんと、スカウトさんが入り混じって、声を掛けている。

見上げる見慣れた看板が、今日は少し違って見える。

元気でね。ちょっとご無沙汰すると思うから。

交差点を渡って、ホテルへ向かう。

誠志堂書店が無くなった交差点には、まだなんとなく、慣れないなぁなんて思いながら。


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