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2002/06/29(土) side B★処女を売りに行った日(1)
去年の春、私はまだ処女だった。唇さえ交わしたことがなかった。

お金が欲しかった。父が死んで、お金はなかった。家も出ていかなければならない話が進んでいて、学校だって続けられるかどうか判らない。母は心を閉ざして入院してしまっていた。「お金がほしい」バイトの募集をいくら読んでみたって、たいしたお金にはなりはしない。春休みから続けていたコンビニのバイトでは、毎日のおかずを買ったら、お小遣いなんて残らない。

駅前を歩いていた時、何気なく受取ったチラシが、今の私に繋がる。安手の印刷のその紙には、夜の飲み屋さんから始まって、キャバクラ経由でピンサロ、ヘルスからデリヘルまでの求人が載っていた。キャバクラ「時給5000円保証有り」サロン「日給32000円保証。高額歩合給制」うひゃ!今のバイトの一ヶ月シフトに入りっぱなしのお金が一日でもらえてしまう。でも水商売なんだ。そうか、その手があるのか。あんまりカワイイ方じゃないけど、一応若い女の子なんだ、私は。

いつも行かない本屋さんへ行って、夜系の求人誌を何冊か買い込んでみる。それを基にして、ネットで色々検索してみる。「お金は稼げそうだなぁ・・・。大変そうだけど」でも、「私に出来るかな?」ではなくて、正直、水商売への偏見が私を躊躇させる。

ちょうどその週、私の第二志望校へ通っている従妹が、学校へ連れて行ってくれる事になっていて、久しぶりに私は東京へ行った。お茶して分かれて、帰りに四谷から新宿で乗り換えて山手線に乗って原宿で降りて、私はぶらぶら表参道のイエロールビーまで歩いていく途中だった。「ねぇねぇ、カワイイね。モデルにならない?」「来たかよ?」て感じだったけど、お金になりそうな事ならなんでも聞いてみたかった。その時は。「オーディション受けて、レッスンしてデビューうんぬん」「ケッ、養成所系かよ」「すいません、お金ないんで〜〜、私ブスだし〜〜」白目むいて口を半開きで答えたら、向こうも「ケッ!」って言って離れていった。

フォレットを少しブラブラしてから、同潤会アパートメントの坂へ掛かる処で、また声をかけられる。って言うかいきなり写真を撮られた。「なんっすか?止めて下さいよ。」「カワイイねぇ、中学生?」「1年ちょっと前はね」「ひゃぁ、清純系?田舎から私学にでも出て来たの?」「いらん世話だよ、まったく」と思ったけど、「湘南だよ、お嬢さまだからさ」って少し笑ってみせる。時計はIWCだし、バッグはハンティングのブリーフケースだ。まとめて150万くらい?ロレックスとヴィトンじゃないのがちょっと気に入った。

名刺には「取締役 出版・映像プロデューサー」の肩書きと、(株)付きの会社名が書いてある。その名前は、レンタルの店でバイトしたときに見覚えがあるものだった。「清純系って声かけて、AVじゃん」「知ってるの?」「バイトで見たよん。中身はしらないけど」なんて感じの会話をした記憶がある。

「どこ行くの?」「イエロールビー」「@@ちゃんの店か?」「知ってるの?」「知ってるよ、ラットミュージシャンの**くんの紹介で知り合って飲んだ事も何度もあるよ。」@@ちゃんとは、イエロールビーのオーナーでデザイナーで、裏原宿&コギレイ系では知らない人はいないカリスマだ。プフもローターの商品もこの人の紹介で広まった事は、ちょっとファッションに興味のある高校生なら誰でも知っている。「けっこう凄い人じゃない?」ってそのスカウトマンを少し見直していた私がいた。

店まで一緒についてきたその人は、店員さんと冗談を言っていて、本当に店に出入りしている事が判る。少し商品を見て、店を出た私にその人は尋ねた。「欲しいの無いの?」「お金が無いの!」「ちょっと待って」お店に引き返しす前に、その人は、お店の前の自販機で何故かリアルゴールドを買って私に渡し、店の前のベンチに座らせた。「ほいっ。あげるよ」「えっ?」はしたないって思ったけど、私は袋の中を覗いてみた。その中には、私が手に取ってみた中で、本当に欲しいなって思ったTシャツとシャツと、カットソーと帽子が入っていた。「どうして判ったの?」「それを判るのが仕事なの」

潰れて寂れた雰囲気になっているキミジマビルの横を通って、左へ曲がってすぐのマックで、私達は少し話をした。私は言った。「処女売れないかな?**万円くらいで」「へっ?俺にウリを買えって言ってるの?」「違うよ、私、正真正銘の処女なんだよ。タンポンもおっかなくって入れてないんだよ、って言うのは嘘だけど」「わはは。それで?」「顔さえ映らなかったら、何でもする。一番高く処女が売れないかな?」「マジ?」「マジ!」「う〜ん、少し時間くれ。俺同じぐらいのギャラ払って買ってもいいよ」「それはダメ。もっと華々しく処女を無くしたい」「なんじゃ、そりゃ、変な奴だな」「あそこは形いいよ。って比べたこと無いけど」「バカか、お前、わはっははは。他に話を回すなよ。マジで動いてみるから」「前金もらってるじゃん。この袋、ありがとう。仏教徒で氏子でインディアンジュエリーつけている女子高校生は嘘つかない」「大田プロへ売るぞっ!マジで処女は大切にしておけよ。自転車には乗っても男と三角木馬には乗るな!っておれ高校生相手に何いってるんだ?」

録音をしておいたように、私はその時の会話は憶えている。話しながら私の決心は固まっていった。私は携帯の番号を書いて彼に渡し、彼は私に自宅と携帯の番号をくれた。「会社のメアドはOK?」「じゃ、プライベートの方へ」ってメアドももらった。

「いいビジネスになることを!」彼は、軽く手を挙げて交差点の方へ歩いて行った。わたしは地下鉄には乗らずに、歩いて原宿駅まで戻って電車で帰った。お財布には、東京往復割引切符復路用の他には、小さく折って横のカードケースに押し込んだ緊急用の千円札が一枚と、150円しかなかったから。


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