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2004/06/29(火) 波 そして 空
考えたくない。考えても答が出ない事だけが、ハッキリしているのだけど、でも、その事を認めたくなくて、また考えてしまう。

しなければならない事は、分かっていて、それをすればいい。でもしたくない。

今した方が良い事も分かっているのだけど、先延ばしにしたい。

先伸ばしたその時には、その時にしなければならない事が今以上に山積していて、きっと先延ばしにしたことをするのか、その時に当たらなければならいことをするのか、決めなければならなくて、後回しにした事が、またその先の時間を圧迫してしまう。

この1月ちょっと、そんな事ばかりを考えていた。

カラダを売る事、そしてソープで働く事を決めた時、私は17才で、そのことが今に繋がっていることは間違いないのだけれど、今の私なら、その決断を一日延ばしにして、結局、一番悪い形で、最終的には同じ決断をしたという確信がある。そしてそれは今の私には繋がらなかったと思う。

ソープで働きだした頃、まだ高校生だった私は、学校に行く前の早朝や、ほんの少し空いた時間に海に通った。wwwに言葉を残し始めた頃の日記には生理休暇中も、タンポンを入れて海で遊んでいたことをまだ幼い言葉で書いてある。

その頃のメインゲレンデは砂浜だったので、暖かくなり、人が少なくて、波が小さめの日には水着のままで、波に乗っていた。少しずつカラダは女になっていってはいたけれど、もの心ついた時から馴染んでいたその場所で、ほんとにずっと知っている地元のサーファーのみんなに混じって、子供の頃のまんまに戻って、遊んでいた。

砂浜に座って、凪になる直前の海で、立ち上がりもしない峰の厚い波でも、うまく掴んで乗っていた、若い頃の父の姿や、初めて一人でテイクオフできた日や、下手なファッションサーファーに突っ込まれて、額を切ったときに、顔を真っ赤にして、でも、私にぶつけたその人に、怒るのではなくて、回避の方法を教えていた父を思い出したりしていた。

死んでしまった父の顔なじみのみんなは、その事に触れはしないけど、どこかから私を見ていてくれて、明るく声を掛けていてくれた。

前は、波さえ良ければ、雨の海でも楽しかった。首筋に雨粒を感じながら沖に出て、霞む海岸へ向かってテイクオフし、顔に掛かる雨も真冬以外は心地よかった。

今は禁止されてしまったけれど、海から上がると震えてしまうそんな日に、砂浜であたる焚き火の暖かさと、木の燃える香りが好きだった。

お店を移ってから、あまり海に行けなくなった。俗に高級店と呼ばれる今のお店は、日焼けは禁止されている。水着の跡は厳禁だし、顔に髪で隠れた日焼けの跡でも付けようものなら、罰金モノだ。そして風邪を引いてしまう事は、全部のスケジュールをムチャクチャにしてしまうので、冷たい海には入らなくなった。

去年私は壊れてしまって、海にも行かなくなった。海に行けなくなって壊れたのかも知れないけど。

今年も先月くらいから、なんだか調子が悪くなってきた。答えの出しようの無い事ばかり考えて、考える事で、考える振りをすることで、また現実から逃げようとしたんだと思う。

梅雨の晴れ間の今日の海は、波はひざ下で、オンショアだったけど、ロングボードで何本かつかめた。陽射しはもう夏の陽射しで、光る波頭が目に痛い。少し夏雲も見える空には、いつものようにとんびが舞っている。

父が知っていた私より、身長は5cm高くなり、父が使っていたゴッデスのロングボードも、今年は片手で持てるようになっていた。

これでいいよね、これで。
父さん、私、間違っちゃったかも知れないけど、このまま行ってみるね、行けるまで。

波を教えてくれてありがとう。こんな空をずっと見せてくれてありがとう。やっぱり私はここが好きです。


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