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2003年10月
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最新の絵日記ダイジェスト
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2005/09/17 side A : ひまわり
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2003/10/03(金) sideA:好きですか?
はじけてしまった猫じゃらしは枯れはじめて、金木犀の香りが風に乗る。肩の開いたお気に入りの七分袖のニットでは、もう少し寒い。結んだ髪をほどいてみると、思ったより暖かくて、でもローションと泡の匂いが、ほんの一時間前までいた個室の景色を連れてくる。

ぽつぽつ歩く駅から家までの道で私は「私」に戻ろうとする。金額に見合う快感をお客様に受取ってもらうために、私は仕事をする。そこに「私」はいらない。「私」は、ただただ、じゃまなだけだ。
その空間と時間は、お客様のためだけにある。私は甘えッ子な妹だったり、強気な女王様だったり、従順な女であったり、淫乱な絵に描いたような娼婦であったりする。共通なのは、この身体だけだ。

いつもの場所にいるいつもの猫達や、同じ時間なら必ず逢う顔見知りの散歩の途中の犬や、今が盛りの庭のコスモスや、茶色になって夜なのに小さな花が咲いている朝顔の垣根を見ながら私は歩く。見慣れた窓に灯りがあって、見慣れた道をぽつぽつ歩く。

母はまた心を閉ざして、前以上に心を閉ざしてしまって今は病院にいる。私は父の残した家で暮らしたくて今の仕事を始めた。でも、母は父のいないこの家が受け入れられなくて、また心を閉ざした。

「お帰り」「お帰りなさい」おばちゃんと妹が「バイト帰りの私」を迎えてくれる。弟はお風呂に入っていた。「今日は柳カレイの干物だよ」半額シールの貼られた、ラップを外しながらおばちゃんが言う。妹は御味噌汁を温めなおしてくれる。

まだ「私」になれて居なかった私は、「西側のお庭に少しお水をあげとくね」と言って外へ出た。花がはじけ始めたエリカの枝に、シッポを上げたカマキリがいた。

こんな私でも好きですか?

カマキリに尋ねてみたって、答えてくれるはずはないのだけれど。


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