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2004/07/03(土)
side A : つぼみたち
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光に向かって、つぼみたちが背伸びする。
夏の用意をかばんに詰めて、母のお見舞いに行く。面会できなくなって、五ヶ月近くになるけど、今まで通り、隔週で私は病院へ向かう。
妹と弟は、会えないお見舞いからは少しずつ足が遠のいていく。
学校行事や、習い事や、広くなっていく交友関係や、たくさんの楽しい事に出会いたくて、少しずつ足が遠のいていく。
今でも食卓の父の席は空席で、でも台所に一番近い母が座っていた席には、食事の支度をする時は妹が座ったり、調子が良くってお料理をする日には祖母が座っている。
お揃いのお茶碗も、いつの間にか一度も使ったことのない母の分だけは、食器棚の奥のほうに、ぽつんとひとつだけ置かれている。
母が大切にしていた花たちは、母が居ない二度目の夏を迎える。
「おねぇちゃん、ごめんね。おかぁさんによろしくねっ」って二人は出かけていく。
ちょっと胸はキリってするけど、泣いてばかりいたあの日の頃を思えば、喜ばなくちゃって言い聞かせる。
広がる青空の中で、私は病院へ寄り、やはり会えなくて仕事へ向かう。
今日もきっと、そんなに悪い日じゃない。
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![](/user/reversible/img/2004_7/3.jpg) |
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