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2003/10/04(土)
sideA:お見舞いに行った。
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弟と手をつないで歩く。道の両側には稲穂が首を垂れていて、少し花弁がチリチリになってしまった曼珠沙華の赤い花が並んでいる。妹は少し前を歩いていて、短いスカートから伸びている足は、もう女の形になっていて、うなじの後れ毛が、少し淡くなった陽射しに耀いていた。
病院は少し高台の森の中にある。広い庭を持っていて、芝生が美しくホテルのようでもあるのだけれど、少し高めのフェンスの先は、外来者を阻むための外向きの反りと、内向きの反りがあることで、ここが病院であることが判る。
今日は会えなかった。
下り坂なのだけれど帰りの道は、行きより少し辛い。私と妹は弟に話しかけるのだけれど、ほとんど答えは無い。帰りに寄ろうねって言っていたファミレスも通り過ぎて、バスに乗る。
「おねぇちゃん、今日バイト休めない?」妹が言う。「ごめんね、土曜だからちょっと無理なんだ。」「そうか・・・遅い?」「深夜までだから泊まりになると思う」
お家に戻っても空気が重い。膝が痛いと言っていた、おばぁちゃんは、今年になって、要介護認定を受け、今日はデイケアハウスへ行っている。
母の代わりには、やはりなれない。父の代わりもなれない。せめて妹と弟が好きな学校ヘ行き、卒業するまでは私が支えるしかないとは思う。
食事の支度を始める妹の手つきは、ずいぶん慣れてきた。部屋から出て来た弟が庭に水を撒いている音も聞こえる。メールを開くと何度も断っているのに、高校時代の友達から合コンの誘いのメールがまた来ていた。
今日はお昼を休ませてもらって、19時から貸切に出る。3コマだけだけど、終わりは1時になるので、いつもの安いビジネスホテルを取っている。今日はどんな女を望まれるのかは、だいたい判るので、オークションで1500円で買ったJ&Rのワンピースに、500円で買ったP&Dのジャケットをリュックに入れる。ヒールはお店のロッカーに置いているし。
何時ものように、ジーンズをはいて居酒屋でバイトしているはずの私は家を出る。行ってきます。今日も上手く私を売れますように。
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