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2004年11月
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2004/11/04(木) side A:     陽だまりの色 
お陽さまの光に少しセピアがかかる。そして影は長い。その色は街に降って、そこここに出来る陽だまりに、丸まる猫たちを暖かに包む。

二週間が経っていた。

少し私には変化があった。そのことは、まだ言葉に出来ないけれど、9月の初めの事とも繋がっていて、暮らしも少し変えなければならない。

16歳のあの日からの、いろんなことを思い出す。

地図帳のあのページには、過ごすはずだったあの国のあの街の地図が挟んであって、そこに行けなかったことが、一番の蹉跌だと思っていた。

何度かその事で泣いたし、机を思い切り殴って、お箸が持ちにくかった日もあった。

カラダを売るようになってすぐの頃、足の付け根に残っている異物感に、電車を乗り換えるたびに駅のトイレに入って、なんだか開いたまんまになってしまっているような気がするヴァギナの入り口を、何度も何度も指で確かめていた日もあった。

大人っぽいと思っていた下手な化粧をし、似合わないJ&Rのスーツを着、むせないようにカプリのメンソールをふかしていた、出待ちのデートクラブの事務所では、こぼしてしまったお茶を急いで拭こうとして、ポケットから取り出したハンカチには、くまのプーさんがついていて、慌てた。

模擬試験を受けた2時間後には、マットでサービスしていたし、くぐり椅子で壷洗いをお客さんに褒められた3時間後には、同窓会で、一番子供っぽいって笑われた。

カラダを売るようになってから、涙は何度も流した。

でも泣いたのは、両手の指の数よりは少ない。

もう、4年以上の日々が過ぎている。1500回以上の夜があり、そして朝は来て私は生きている。

生れて7500回ちょっとの朝に、きっと7000回くらいは「おはよう」と言って、もう5分の一はソープ嬢の私が、「おはよう」と言った。

陽だまりの色に、咲き始めたパンジーが少しだけ染まる。

ずっと、ずっと、おばぁさんになるまで生きて、いつか、私も陽だまりの色になりたい


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