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2004/08/04(水)
side A: ねこさん そして ねこひげさん
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門灯の灯りの中で、いつもよりずいぶん早く、ねこひげの花が開き始める。
ちっちゃい私をあやすように、写真の中のねこさんは優しい顔で座っている。
母が娘の頃から一緒にいたそのねこさんは、お嫁に来るときもいっしょに来た。
少しだけの私の記憶の中と、母のアルバムの中には、たくさん、そのねこさんはいる。
そのねこさんは、ちょっと目つきが悪くて、ちょっと太っていて、ワチフィールドのダヤンに似ている。でも、私のそばにいるときや、母に抱かれて写っている写真では、ほんとに優しいお顔をしている。
私が病気で、ねこの毛に強いアレルギーがあることが判った時の母の困惑は、想像に余りある。
ねこさんは、母の友人の家で3年を過ごし、そして逝った。
私はそのことをずっと知らなかった。突然もらわれていったねこさんが恋しくて、母や父に泣きながら「返してよ!」ってなんども言ったことを憶えている。
母が自分の世界に入っていった時、母は私に言った。
「あなたが病気だったから、ねこさんは行っちゃったんだよ。ずっと仲良しだったのに。」
ねこさん、ごめんね。恨んでますか?私のせいで、一緒にいられなくなったことを。
ねこさんが、ずっと母のそばにいてくれたら、母は元気で、父は今でもいましたか?
私が弱く生まれついたことで、いろんなことが変わってしまった。ごめんね、みんな。
秋の初めの、お庭には、いつもねこひげのお花が揺れていた。ほんとに、ねこさんのおひげにそっくりな花が。
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![](/user/reversible/img/2004_8/4.jpg) |
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