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2004/03/06(土) side A:ちっちゃな Cafe
ステップを下ろして、駐車場のすみにバイクを止める。寒い間はあまり乗っていなかったので、今日は注油してから海外沿いの道を葉山まで走った。迷って、冬用じゃないグローブを付けてきた手は、少しかじかんでしまって、帰りの道沿いにみつけたちっちゃなCafeでお茶をすることにした。

何度も走っている道なのに、今までこのCafeには気付かなかった。ドアに手をかけるときに、思わず見回してしまったけれど、少し芽吹き始めたツタは、月日を刻んだものだし、銅製のドアノブは、たくさんのお客さんを迎えて、磨きこまれた色がある。

「いらっしゃいませ」迎えてくれたのは、春休みのバイトなのか、オーナーの娘さんのなのか、まだ15は超えていない女の子だった。

「何になさいますか?」明るい優しい声に、思わず私は微笑む。グローブをはずしながら、メニューを手に取ろうとすると、「ちょっとお待ちくださいね」と言って、カウンターに入っていく。

古いJ-POPのバラードが流れる店内は、他にお客さんはいない。クラシックが似合いそうな、木のインテリアに、木綿の趣味のいいクロスが溢れる店内に、そのバラードが何故かなじんでいるのが不思議だった。

「どうぞお使いください。戻ってきた女の子は、私の冷たくなった手を両手でギュッと握ってくれて、、そして、おしぼりではない、ワイルドベリーのちっちゃな刺繍の入った暖かいタオルを、籐の籠にいれて差し出す。カジカンだ手がゆっくり暖められていく。
「ありがとう。」って言う私に、とびっきりの笑顔をその子はくれる。

焼き菓子とミルクティーのセットを頼んで、私は目を閉じる。この風景はどこかで見た気がする。

紅茶の高い香りが漂ってきて、焼き菓子の仕上げに使っている、飴が溶ける香りもする。すごいなぁ、こんなちっちゃなお店なのに。

レザーのライダースのジッパーを下ろし、ブーツのバックルも2つ外す。今度来るときは、かわいいワンピースを着て来たいお店だなぁなんて思う。

ゆっくりゆっくり運んできてくれた、銀のお盆にのったお菓子は、それは美しくて、温かいミルクの表面には、濃い紅茶の綺麗な渦が見えている。

美味しい

お菓子は懐かしい味で、とても美味しく、紅茶はカラダ全部を暖めてくれる。私は、ふっと眠りに誘われそうになる。いい時間だ。

「娘さん、邪引くよ。」

邪気の無い、散歩中の年老いた御夫婦が揃って声をかける。

目が覚めると、私は砂浜で眠っていた。遠くに江ノ島が見えていて、自動販売機で買った紅茶を飲みながら、私は一息いれていたんだった。「ありがとうございます」ぺこりとお辞儀をして、今の夢に出てきた少女の顔を思い浮かべる。

それは、古いアルバムに写っていた、幼い母だったような気がして、そしてあの御菓子の味は、もう何年も食べていない手作りの味だったような気がする。

襟からも入っていた砂を払って、ジッパーを上げ、グローブを付けてヘルメットをかぶる。

女の子の手のぬくもりだけが、残っている気もした。


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