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2004/02/07(土) side A:ただいま
フェリーの着く港でバイクを受取って、高速道路で熊本へ向かう。ヘルメットがちょっと大きくて、なんだか落ち着きが悪い。

インナーが少し痛んでいたけど、良く手入れされていて、トリコロールが白に映え、小さくFREDDIE SPENCERと手書きの父のまだ若い文字が入っている。ロフトの荷物を片付けていた時に出合った、父の最後のヘルメットは、20年以上も大切にされていて、私は一緒に父の街に行きたくなった。バイクはHONDAじゃなくてYAMAHAだけど。

この日記を書くようになってから、父の書き残した物を、少しづつ読んでみる。見つけた頃は読めなかった。きっと知られたく無いこともあるだろうし、私なら絶対に嫌だったから。

でも、もう居ない父は、もう私と話すことは無い。父が居なくなって私が選んだ暮らしを、父の居ない今の家族に話すことは無い。絶対に。もし、歳を重ねて、すべてが想い出として包めたら、父は私が生まれる前のこと、そして重ねてきた様々な人生を、炬燵に入って、まだ言葉の判らないちっちゃな赤ちゃんを抱く私に、ポツポツ話してくれたかも知れない。そして、ちっちゃい頃の私の話もしてくれたかも知れない。

大判のダイアリーだったり、手帳だったり、大学ノートだったりと書いてある物はまちまちで、そして何故か日記帳には仕事のことしか書いてない。学生手帳には、もう母の事が書いてあって、呼び名が苗字から**さんになり、ちゃんになり二人だけの愛称になっていた。

基山のパーキングエリアで、出汁の黒くないうどんを食べただけでひたすら走った。ニコニコドーの大きな看板が見えて来て、熊本インターを降りる。八景水谷はもうすぐだ。


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