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2004/04/07(水)
side B : 初めて体を売った日
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シャワーを浴びて、浴衣を着た。帯をどんな風に結ぼうか迷った。家族で行った温泉でも、肌が出るのが嫌で、スウェットを持っていっていた。
「今日が初めてなんだって?」父より年上のお客さんが、お金を財布から裸で抜き出しながら尋ねる。「えっ?そんなこと言いましたっけ?」中途半端な敬語で、応える私に「社長に頼んでおいたんだよ。お初で若い子が入ったら、連絡くれって。」
「合格だよ」って言われて、すぐにプロフの写真を撮った。大人っぽく見えるかなと思って着ていった、シビラのモスグリーンのワンピースは着替えさせられてしまって、事務所に置いてあった、CECILMcBEEのタンクに、パンツが見えそうなミニスカートにルーズをはいて撮影されて、それから竹下通りの修学旅行生向けのお店でしか売っていなさそうな、テラテラな生地の黒のゴスロリ衣装で撮影された。そして最後に、リクルートでも使えそうな黒のミニタイトスーツで撮影した。
「高級エスコートクラブ」だったはずなのに、なんだかイメクラに来たような気がしたけど、調べて調べて来たこの事務所は、接客するお金は抜群に高かったし、事務所には革張りのゆったりしたソファーが置かれ、高級そうな調度品は掃除が行き届いていて、駅まで迎えに来てくれた車はピカピカのメルセデスだった。
「さぁ、今日から仕事だよ」と言われて、「えっ?」って思ったけど、頷いた。今思えば、まだプロフも無いのに、説明されたシステムが本当なら、今日からお客さんが居るはずも無いことは判る。
「そうですか。初めてなので、よろしくお願いします。」 せめて、ティッシュくらいに包んでくれればいいのになぁって思ったけど、その場で金額を確認するように言われていた事を思い出す。 「一枚二枚、・・・全部で*万円お預かりします。」 「それじゃ、コンビニだよ」とお客さんはまた笑う。 そう言えば、私はお金のやり取りするアルバイトは、コンビニでしかしたことが無かった。
「ハイハイ、優しくするから大丈夫だよ。」
浴衣を脱いだお客さんの体は、父のように、パンと張ったお腹じゃなくて、肉が垂れたお腹には、下のほうから毛が繋がっていて、シャワーを浴びたばっかりなのに、離れていても臭いがする。その事だけを覚えていて、正直、顔は良く覚えていない。
ビデオの撮影で処女じゃなくなって、でも性行為はそれしか経験が無かった。ベッドの横に座って、衿口から手が入ってくる。その頃の私の乳房は、手のひらにすっぽり入るくらいの大きさだった。 「ほんとは幾つなの?」「えっ?」乳首を指で転がしながら、尋ねる。「20歳ですよ」と答えると、わははは、と笑って、「いいのいいの、僕は若い方が好みなの。」と言いながら、前に回って、浴衣の裾をめくる。足の付け根があらわになって、思わず体が縮んでしまう。 指を口に入れて唾で湿らし、足を開かせた私の芯を指で開きながら、「処女?な訳はないか」とまた笑う。
指が中に入って来て、ぐねぐねと動く。撮影の時にも、指は入れなかったので始めてその感覚を知り、なんだか、指紋の形までわかるような気がした。知らないうちに私は目をぎゅっと閉じていて、いきなり、唇が唇に触れ、舌が、押し入れられて、舌を絡め、歯茎を舐め、そして私の舌を自分の口に吸い込んだ。息がつまって少しむせる私の背中を、少し撫ぜてくれて、「ほんとに初めてなんだね」と、目を輝かせる。
ベッドに横向きに押し倒して、足を思い切り開いて、上げて、床に膝立ちになったお客さんは、私の芯を嘗め回す。外陰唇を円を描くように舐めながら、時々舌を細く尖らせて、入り口から少し入ってくる。その間も右手の人差し指は、ゆっくりした同じリズムでクリトリスを撫ぜ上げていて、そこだけが少し火照ってくるのが判る。
気持ちいいわけじゃない。でも全身が神経になっているみたいだし、変に頭は冷めていて、お客さんがする事を一つ一つ覚えている。でも、濡れていた。
カーテンを開け放した窓からは、正面にオペラシティービルが見えていて、仕事をしている人達が小さく見えている。空に三角の屋根を突き出したホテルで、私は初めて体を直接現金に変えた。
行為が終わって、ラウンジで生まれて初めてカクテルを飲まされた。ガラス窓から都庁が直ぐ近くに見えて、ちょうど雨が落ちてくる。 「雨だね」 「そうですね」 「残り2時間あるね」
部屋に戻って、もう一度行為をした。帰り仕度をして、浴衣を二人分たたみ、ベッドシーツを直していて、お客さんにまた笑われた。
シーツにはうっすら血の跡があって、きっと処女膜は完全に擦り切れちゃったんだなぁ、って思った。
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