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2004/10/09(土)
side A: さ よ な ら
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雨の音で目を覚ます。時計を見ると、まだ五時前で外は暗い。
寝ぼけ眼でスイッチを入れるTVのニュースが、台風はこちらに向かっているって言う。
レインウェアの上だけ着て、まだ咲き続けているひまわりの周りに、支柱を立てて紐でくくる。この前の強い風までは、まだみんな元気だったので、まとめてくくっておけば、大丈夫だった。
でも、冷たい風に吹かれてから、蕾をまだ付けたままなのに、ちょっとした風でも倒れてしまう株もあって、真夏の元気はもうない。
連休のすぐ後に種を撒き、芽を出したひまわり達は、梅雨の終わりにはもう咲いてくれて、4ヶ月近くお庭を明るく彩ってくれた。
お家の中に入れられる、鉢やプランターは全部入れて、お庭のみんなに「がんばってね」って言って、少し強くなってきた雨の中で、私は仕事に向かう。
こんな天気の中で、足もズボンもずぶ濡れにしながらも、予約のお客さんは全員来てくれて、個室に持ち込んだアイロンと、用意しておいた靴下が活躍してくれる。このお店に移ってきてから、マネジャーにお願いして揃えてもらった靴用のドライヤーも、フル稼働する。
仕事が終わってお家について、お庭にまわると、ひまわりは全部倒れていた。倒れる前に、よほど風に弄られたのか、茎も枝もほとんど裂けていて、雨にも打たれて、もう咲くことはないことが一目でわかる。
「長いことありがとう。さよなら。」私は小さく手を合わせる。
「ひまわり、全部倒れてしまいました。蕾が大丈夫そうなのだけ、水盆に入れておきました。」
妹の字で、書置きがある。
おうちに入れてもらった幾つかの蕾は、蛍光灯の光の中で花びらを開き始めていた。
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![](/user/reversible/img/2004_10/9.jpg) |
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