サーシャ親父の独りよがり日記
ホームページ最新月全表示|携帯へURLを送る(i-modevodafoneEZweb

2008年1月
前の月 次の月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
最新の絵日記ダイジェスト
2010/04/21 平安時代以前j
2010/04/13 コスプレ
2010/03/27 ジャズ
2010/03/17 歌垣の王女
2010/03/13 奈良時代以前

直接移動: 20104 3 2 1 月  200912 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 月  200812 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 月  200712 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 月  200612 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 月  200512 11 10 9 月 

2008/01/23(水) 茨木のり子さんの詩から
金八先生の番組で紹介された詩です。

『廃 屋』
人が
棲まなくなると
家はたちまち蚕食される
何者かの手によって
待ってました!とばかりに

つるばらは伸び放題
樹々はふてくされて いやらしく繁茂
ふしぎなことに柱さえ はや投げの表情だ
頑丈そうに見えた木戸 ひきちぎられ
あっというまに草ぼうぼう 湿気にむれ
魑魅魍魎をひきつれて
何者かの手荒く占拠する気配
戸さえなく
吹きさらしの
囲炉裏の在りかのみ それと知られる
山中の廃屋
ゆくりなく ゆきあたり 寒気だつ
波の底にかつての関所跡を見てしまったときのように

人が
家に
棲む

それは絶えず何者かと
果敢に戦っていることかもしれぬ

*************************

そして、もう一つの詩

『自分の感受性くらい』
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたし

初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志しにすぎなかった

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る威厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ

****************************

恋の歌から

『あほらしい唄』
この川べりであなたと
ビールを飲んだ だからここは好きな店

七月のきれいな晩だった
あなたの坐った椅子はあれ でも三人だった

小さな提灯がいくつもともり けむっていて
あなたは楽しい冗談をばらまいた

二人の時にはお説教ばかり
荒々しいことはなんにもしないで

でもわかるの わたしには
あなたの深いまなざしが

早くわたしの心に橋を架けて
別の誰かに架けられないうちに

わたし ためらわずに渡る
あなたのところへ

そうしたらもう後へ戻れない
跳ね橋のようにして

ゴッホの絵にあった
アルル地方の素朴で明るい跳ね橋!

娘は誘惑されちゃいけないの
それもあなたのようなひとから

**********************

こんな詩を読んだら、島崎藤村を思い出した。
『初恋』
まだあげ染めし 前髪の
林檎のもとに 見えしとき
前にさしたる 花櫛の
花ある君と 思いけり

やさしく白き 手をのべて
林檎をわれに あたえしは
薄くれないの 秋の実に
人恋い初めし はじめなり

我が心なき ため息の
その髪の毛に かかるとき
楽しき恋の 杯を
君が情けに 酌みしかな

林檎畑の 樹の下に
おのずからなる 細道は
誰が踏みそめし かたみぞと
問いたもうこそ 恋しけれ

*******************
島崎藤村、若い頃、大好きな作家でした。


 Copyright ©2003 FC2 Inc. All Rights Reserved.