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2018/01/06(土)
ファントム4
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世の中最近地震がおおかったり、上の階の住人や隣がすごいいやがらせしてきますけど。(彼らIS的な政治的思想をもったひとたちなので。女がこういうことしてるのが許せないらしい。)いろいろしますけど。 とりあえず・・・連載です。負けません。
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4.星の音
展望室は、管理センターの最上階にあって、ガラス張りのドームのような形状をしていた。 通常は関係者以外立ち入り禁止のエリアだ。 そんな展望室に、時々文曲は一人閉じこもって、プラネタリウムのように星の降る様を眺めていた。 まるで、親にしかられた子供が、こっそりと屋根裏部屋に篭ってすねているかのように・・・。 そんなとき、必ず文曲はヘッドセットを手にしていた。そのヘッドセットをつけて、何を聞いているのかは誰も知らない。 ヘッドセットをつけながら、この展望室に小一時間ほど篭り、しばらくすると、何事もなかったかのように出てくるのが常だった。
展望室に来るのは、深夜のときもあれば、昼間の執務中のときもあった。 今回も文曲はヘッドセットをつけて、一人まっくらな展望室で満天の星を見上げながら、たたずんでいた。 そこへ・・・武曲が現れた。 武曲がこの展望室にやってくるのは初めてのことだった。 武曲の姿を見て、少し驚いたような面持ちにになった文曲は、ヘッドセットをはずして
「どうして・・・ここだとわかった?」
と武曲に尋ねた。
もう、あの会議会場のときのような殺気はまったくなくなり、いつもの穏やかな文曲がそこにいた。
「廊下ですれ違った肌の青い職員が・・・ここだといっていた」
武曲がいうと
「肌の青い職員・・・・? 」 (イオか?)
身体的特徴を言われて、すぐ思い至ったのは、データ処理室のイオという職員だった。確か、あのルーキーのレオニスと同じ職場だった・・・と文曲は思い出したが、そのことは一時保留にして、さきほどの会議場でのことを口にした。
「とんだ醜態だ・・・」
苦笑いしながら文曲はつぶやいた。
武曲は短い沈黙のあと
「気にするな・・・」
といった。
「・・・・私は・・・宇宙一の秀才などと、周囲のものに言われるが、星のデータを集めること以外、実際のところは何も出来ない。 ああしたモノたちの前に出ると自分の無力さが身にしみる。説得はおろか、論破することも出来ないのだから・・・」 文曲の言葉に、武曲はなんと言っていいかわからなかった。
星明りの下に浮かび上がる、文曲の線の細いシルエットを前に、武曲は
(こいつは・・・こんなに華奢な方に、重責を一人で背負い込んで、会議場でたった一人で戦っている・・・。俺は横に居て、その重責の一旦のかけらすら共有することも出来ない・・・。お前より、はるかに頑丈で、大きくて丈夫で力もあるのに・・・。無力で非力なのは俺のほうだ・・・。)
そう思うと、自分が歯がゆかった。
そんな武曲の沈み込んだ波動を知ってか知らずか、文曲は
「今日は会議を抜け出してサボったおかげでいくらかクールダウンできたよ。このところ仕事詰めだったからね。明日は決算報告と次年度予算の獲得だ。センターは赤字続きだ。ここらで予算を引き出さなくては。」
といった。 もう、いつもの文曲に見えた。
「行こうか」
文曲が、ヘッドセットを手に部屋を出て行こうとしたとき、武曲は、そのヘッドセットが気になって
「それは?」
と尋ねた。
文曲は
「ああ・・・これか。これは・・・バイオフィードバックだ」
と答えた。
「バイオフィードバック?」
「そう。脳波を音や光に変換する装置だよ。平常時の脳波をこの装置で意識することで、自分の感情の乱れを客観視できるというものだ。人によるが、私は音に変換してフィードバックさせている。」
そういうと、文曲は、口元に軽く手を当てると、ちょっと考えるようなしぐさをしてから
「面白いものを聞かせよう」
といって、ヘッドセットをつけると、ドームの中心を見上げた。
そして、ヘッドセットの片側を持ち上げて、武曲を手招きすると 「聞こえるか?」
といった。
武曲が大きな体をかがめて、文曲のヘッドセットのスピーカーの片方に自分の耳を近づけると、ランダムな柔らかな金属音が聞こえるのが解った。
「・・・・? これは?」
武曲の質問に文曲は
「星の音だ。正確には・・・星を見たときに反応する私の脳波をフィードバックしたものだ。共感覚というやつだよ。私は星を見ると脳内に金属音が聞こえてくるのさ。 その音を実際に際限したのがこれだ。ここに来て、これを聞いているといい気分転換になる。」
文曲がフッ・・・と笑うと、武曲にヘッドセットを渡して
「君もやってみるか?」
といった。
武曲は
「いや・・・いいよ。」
といった。
二人は展望室から出ると、再び会議場のあるファルス・ワンへむかった。
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