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2018/01/07(日)
連載
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SFファンタジー「ファントム」
5.激闘再燃!!定例会議
定例会議三日目、議題は「宇宙管理センター」の運営費に関する予算増額に移行していた。
昨日、アルクトゥルスの挑発にのって「惑星・衛星の資源採掘に関する規制条約」の提言にすっかり水をさされたばかりの文曲にとって、その状態で「宇宙管理センター」の運営費増額を議会に対して提言するのは、なかなかにはばかれる状況ではあった。
採掘の規制に反対するアルクトゥルス側の惑星代表者たちは、規制を強化する文曲の提言に対し、その論拠となる前提条件に対して「理論上のこと」「秀才の杞憂」「机上の空論」と揶揄した。
同じレベルでのやりとりのもとでは饒舌になる文曲だが、尺度の違う相手からの野次、罵倒をかわし、相手を説得する・・・という才能には、残念ながら文曲は恵まれていない。
この状況下で予算の拡大を切り出せば、またしてもアルクトゥルス一派から、叩かれるのは眼に見えていた。
「正攻法ではダメだ・・・」
文曲は作戦を立て直していたが・・・・実際議会が始まって見ると、案の定強烈な「管理センター」へのバッシングがまっていた。
アルクトゥルスが、宇宙管理センターの運営費の予算拡大の議題に対し 「そもそも。宇宙管理センターの存在理由そのものに、私は疑問を持つのであります。」
真っ向から、否定する発言をしてきた。
「資源掘削による惑星、及び、衛星等の質量の変化が、重力の変化を引き起こすと、何をもって論じられているのか。宇宙管理センターの役割は、惑星や衛星の環境保全のためとおっしゃるが、日々惑星や衛星は変化し、誕生と死を繰り返しているわけです。そんな当たり前の事象に対し、我々が、強制的に運営費を請求されてまで、センターを存続させ、当たり前の情報を延々と集積する必要性があるのか、私はこの場にて参加惑星の代表諸氏に対し再考をお勧めしたいと考えるのであります。」
アルクトュルスの言葉に、文曲は再び、言葉を失った。
「どこの惑星でも、われわれ生命体の消費するエネルギーの供給の問題は深刻な問題です。 言って見れば、懐事情がどこの惑星の諸氏に置かれても、けしてゆとりのあるものではないと推察いたします。そのわれわれの乏しいエネルギーの中から、宇宙管理センターの維持運営費を捻出する必要性が果たしてあるのか。宇宙管理センターが存在することによって、一体われわれは何の利益をこうむることが出来るのか。 投資は、それに見合った見返りがあってこそなされるもの。学者先生の道楽に多額の出資を行うほど我々はお人よしではないのです。」
アルクトゥルスの言葉に文曲は
「管理センターは、星のデータの集積だけを行っているわけではありません。データによって得られた情報に基づき、早期の異常に関しては修復を行う、技術提供も行っています。また、昨今、この連合に加盟していない惑星からの、海賊行為を伴う紛争に関しても軍事介入を行っています。われわれは資源採掘そのものを否定しているわけではない。届出のある採掘国の経済活動をむしろ支援した活動も行っている。しかし、採掘量が増大した今日、既存の方針と運営では宇宙の環境を保持していくことができないといっているのです。」
といった。 その言葉に、更に揚げ足をとるようにアルクトュルスは 「だから・・・もっとわれわれ議会の代表者たちよりも、自分たちが宇宙の管理を行う権限を強化したい・・・。自分たちこそが、選びぬかれたエリートであり、宇宙を支配するにふさわしい集団であると・・・こう局長どのはおっしゃりたいのだろう。」
といった。
反論すればするほど相手は文曲の言葉を歪曲し、会議場をミスリードしようと言葉巧みに先導していく。 文曲は唇をかんで押し黙った。 強く握りしめたこぶしが、わずかに震えている。
横にいる武曲が、そのこぶしの上に手を置くと
「落ち着け・・・」
と一言言った。
そのときだった、議会場から他の惑星代表の発言があった。
「議長。わたくしは惑星ガニメデの代表エルガ。発言の許可を求めます。」
議長は 「許可します」
と答えた。
「われわれ惑星ガニメデは皆さんもご存知の通り、先だって惑星の老化により生存不可能になったところを宇宙管理センターからの惑星からの早期の異変の通達により、人工衛星の建設を実施し移住をおこなったものです。人工衛星の建設に伴う技術指導も随分有益でした。移住後、既存の惑星は重力場の激しい変化により居住不可はもとより、衛星とのクラッシュがおき、われわれはすんでのところで宇宙に放り出されずにすみました。こうした功績もセンターは有しています。一概に無意味な存在と決め付けるのはいかがなものかと思いますが。そして局長は、従来のこうした活動のみでは、人工的に老化の早められる状況に太刀打ちできない。ゆえに、環境破壊に結びつく採掘の規制を呼びかけていらっしゃるのではありませんか?」
エルガというものがそう発言した。
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