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2018/01/08(月)
5.つづき
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SFファンタジー「ファントム」
5.激闘再燃!!定例会議 つづき
エルガの発言にアルクトゥルスは
「貴方は随分と局長どののお気持ちを理解されているかのような物言いをなさる。」 とゆがんだ笑みを浮かべた。
アルクトゥルスの言葉にエルガは 「局長のお気持ちというよりは、管理センターの理念を理解しているつもりです。理念に基づいて私情を挟まず運営をなさっておられる局長のお考えを理解できることに、なんら不思議はありません。」
といった。
「貴殿の惑星は技術力も高く、知的生命体の個体数も少なく、裕福でいらっしゃる。ゆえに、そんなことがいえるのです。われわれのように、個体数が多く、エネルギーに対して常に枯渇を感じているわれわれとはちがう。管理センターは貴方方のような惑星が支持されればよい。われわれにとって管理センターは無用の長物。ただの口やかましい金食い虫だ。」
議会は、いつの間にか、アルクトゥルス対文曲から、アルクトゥルス対ガニメデのエルガに移行していた。
エルガという代表の切れのよい発言を聞きながら文曲は小声で
「彼に管理センターのスポークスマンもやってもらいたいね」
といって苦笑いをしながら隣の武曲の顔をちらりと見た。
武曲は
「彼の本業はアレだ。お前とは違う。代表が口下手では務まらんさ」
といった。
会議はその後数時間に及び、管理センターの次年度予算増大に関しては運営に賛同する有志からの補助金が増額されることとなり、センターの存続はなんとか首の皮一枚でつながったという感じであった。
会議終了後、すぐにでも帰ってベッドに倒れこみたい文曲だったが、エルガという代表者に助け舟を出してもらったことへのお礼や、採掘規制に関する条約の設置を実現するため、他の惑星の代表に対してコンセンサスを得るために、普段は決して出席することのない会食に出席することになった。
「会食の席まで二時間ある。センターに戻るか?」
武曲の問いに
「そうだな・・・。いや、ここの控え室で休ませてもらう」 文曲は、少し迷ってからそういった。
文曲の迷いの理由は、このファルス・ワンの定例会議会期中の環境にあった。
人間でいえば、「エアコンの温度設定」というようなレベルであるが、このファルス・ワンは人工衛星で、しかも各惑星の代表が集まるということで、重力場が概ね代表者たちが一箇所に集まっても、支障のない設定になっている。
その重力場が、文曲にとっては「負担」だった。
長時間異質の重力場に身を置くのは、低地のものが高山で暮らすようなもので、疲労度も大きい。
もっとも・・・その「平均化」された空間が負担になるのは、文曲だけではなく、ここに集まる全ての代表者たちにも等しくいえることなのだが。
文曲と武曲は、おのおの用意されたファルス・ワンの控え室に向かうことになった。
-- shiwori sugisaki <senshow@yk.netlaputa.ne.jp> http://www.netlaputa.ne.jp/~senshow/
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