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2006/11/24(金)
薄墨の便りによせて
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某桜殿のブログで年賀状作成の時期だと知った。 そうか、もうその時期か・・・と思ってよく見てみれば郵便局の前やコンビニで 「年賀葉書絶賛発売中」とか「印刷承ります」というPOPが張り出されているのが目に飛び込んできた。
今年はいろいろ気を向けることが多かったからなぁ。 忙しいと目先の用事に追い立てられて、こういう季節の流れの速さについていけてないよな・・・ と、時事感覚のなさにため息する。
それから、とりあえず賀状の購入だなぁ。何枚要るかな?と枚数の勘定をはじめ ああ、去年は急いで刷ってほっとしてたのに、その後で喪中葉書が何枚も届いて失敗だったな・・・と思い出した。
そういえば今年は着てないなぁ・・・
なんて思いながら郵便受けを覗くと・・・あ、着た。 今年最初の喪中葉書だ。
さっと目を走らせて・・・奈良県・・・と言う住所と見知らぬ女性の名前と良く知った苗字を見て・・・ ああっ・・・と、がっくりきてしまった。
大好きだった恩師の訃報だった。 裏を返して挨拶を読めばもうこの夏には亡くなっていたらしい。
先々月着た同窓会の新聞の訃報の欄には載ってなかったから、 教授はまだまだ頑張ってんだなーって喜んでいたんだけどなぁ。 間抜けだったなと思う。
賀状のやり取りだけでなくて、もっともっと季節の便りとかしておけば良かった・・・ そうしたら生前にお見舞いとか出来たかもしれない。 いや、それは無理でも告別式に出席できたかもしれないと後悔した。
とても面白い先生だった。 中国人に追いかけられて先生の部屋に飛び込んでかくまってもらった時には、真顔で
「あいつらは毎日にんにく食べてるからスケベだ。」
なんて、自分はにんにくが食べられないから淡白だけど 食べてる人は強いんだとかなんとか意味不明な持論で注意を促すし 製作中に寒かったらワインを飲めって一緒に紙コップで 安いワインを飲みながら指導してくださるし、貰いタバコも平気そうで・・・
ご飯を食べていると、先生が残すので、 先生の年代の人にしては珍しいと思い指摘してみると
「残しちゃだめって言う考えはおかしいよ。 いいか、食べないで捨てるのも、無理して食べて体を通して捨てるのも一緒だろ?」
って、自分の適量を食べたらいいんだってスレンダーな教授がさらりといっちゃうところは本当にステキだった。
フランスに留学していたときの話も、他の教授の話は ともすれば自分の研究成果や業績の誇示になるのに、先生が私に話してくれるのは、 先生が感じた私に似た女子学生の具体的な様子についてだったり、 その実、日本の国宝の修繕のメンバーに選ばれているなんて凄いことを絶対話さなかったり・・・ 本当に偉ぶったところがなくて、ステキなステキな先生だった。
美しい稀な存在の人だったと思う。
冥福を祈るというのは具体的にどうすればよいのか良くわからない。 わからないままに、ほんのわずかでも 先生と交わる人生であったこの幸運を深く感謝したいと思う。
そう願いながら ああ、それでももう一度ゆっくり話がしたかった・・・先生の声が聞きたかった と願ってしまい、それが叶わないと思い直せば、 とても悲しい気持ちでいっぱいになってしまうのだった。
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