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2009/01/17(土)
ムード
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ほんとに、日本人は「ムード」に弱い。ムードだけ、と言ってもいいぐらいだ。 バブルの真っ只中の時期に、「国際交流」について本一冊分の原稿を書いたが(お蔵入りしたー悲笑)、あの時も、「国際」と「交流」という大言壮語の美しい言葉に甘い夢を託しただけ、という印象が強かった。
最近、日本からのニュースで、オバマ氏の演説集がベストセラーになり、英会話の学校や大学のゼミで、演説を暗記したり勉強していると流れていた。日本に帰ったときに、その演説集を手にとってみたが、対訳がついた英語の教材だった。ニュースでは、英会話学校の様子が映っていた。先生の前で、生徒が覚えてきた演説の英語を言っている。先生が何か言った(そこの部分までは聞き取れずー笑)。次に、大学教授がテレビカメラに向かって曰く、経済不況下で、hope、changeといった言葉が若者に希望を与えるのでは、なんとかかんとか。。。何、これ、と思った。hope,changeといった言葉づらを暗記して、口にすれば、hope やchangeが生まれる???とんでもない。まあ、obamaの言葉づらで、饅頭作って売ったり、食べたりするよりはましかもだが (怒笑)
これまた日本からのニュースによると、コンビ二で、プラスチックの買い物袋を「いらない」とすら言えない人のために、「袋いりませんカード」が用意されているという。客が、店員に見せるそうな。経費節減といいながら、経費のかかることをしているではないか。一言、言葉にすればいいものを、それができずに、経費を使って作ったカードを見せるらしい。そんなことが奨励される社会で、hope,changeはありえるか。私の答えはノーである。電車の席もそうだった。広いスペースをとっている人に、「すみません、ちょっと寄ってもらえませんか」が言えないからと、お尻の形に席がくぼませてある。社会生活を送るために、自分が必要とする、したいことが口にできなくなっている閉塞的な社会で、オバマ氏の言葉が新鮮に聞こえるから、と演説集の言葉を暗記する? ムードに酔っただけの、暗記されたhope,changeといった言葉づらは空虚に響こう。経験に裏づけされていないからだ。
なぜオバマ氏の演説に力があるか。。やはり彼が混血とはいえ、黒人だからだろう。富裕層の人間で、金持ち世界で育ち、大都市の貧困層の黒人とは違うが、たとえ上流世界でも「肌の色」は、彼にものすごい「悩み」をもたらしただろう。その悩みを解決しよう、そこからはいあがろうとしてきた葛藤のエネルギーが身体に蓄積されてるからこそ、口から出る言葉にパワーがある。そして、そのパワーが人々に希望を与える。アメリカ史を形成してきた黒人たちにとっては、どんなに涙を流しても流しきれないような「希望」の象徴だろう。Hopeとchangeは、彼の存在自体にあり、存在の根源から生まれた言葉が人を動かす。
演説集を読んで、hope,changeという言葉を口にしても、自分がどんな社会に生きたいかというビジョンをもち、現状からはいあがろうと自らの身体が動いていなかったら、hopeもchangeもありえない。そうそう、女子大生が言ってたな、「就職活動に役立つと思います」−面接のおっさんに、hopeとchangeを並べるのだろうか。会社は嫌うだろうな。。(笑) いやいや、流行語のhopeとchangeは喜ばれるだろう。御しやすい、しょせん流れに乗るだけのお気楽人間で、会社の言うことをよく聞く、役に立つ人間になるだろうと。(笑) ほんとにhopeとchangeをもたらす人間はまず嫌われるものだ。でも、アメリカ国民はそれを選んだ。それが、アメリカという国の底力だと思うし、国民のあいだで不満が飽和状態になっていたことの証左でもある。日本??? 演説集がベストセラーだと全国ニュースに流れ、お尻の形にくぼんだ電車の席に座って、演説集を暗記している限り、国民は静かに、「うち」に沈んでいく。
そういえば、今回の旅行で、娘が一番びっくりしたのは、乗り合わせた電車が人身事故をおこしたとき、乗客たちが車内で2時間近く静かにしていたことだそうだ。アメリカ人なら、大変だ、何か自分にできることはないのか、助けられないのか、とわあわあ騒ぐだろうという。なぜ日本人は、と。。。騒ぐのは大人げない、というマナーもあるだろうし、「人ごと」という気持ちもあろう。自分の置かれた状況を、「人ごと」として切り離してしまうことができる人に、オバマのhopeと,changeは届くまい。。まず自分の足元に問題意識を持つこと、そして生きることを真剣に考えること。。「命の大切さを教える」んじゃないんだよ。(笑)まず自分で身体を動かしてみて、生きているエネルギーを蓄積していくこと。。
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